9月4日(日曜日)
 別府港から八幡浜港に向けて進む船の中で日付が変更。 マッサージチェアーで骨抜きになって2等客室に戻って仮眠体勢。 横になって気持ち良く眠りに落ちていく段階なのに、なぜか煩くテレビがついてて「消せよ!」と怒鳴りたかった。 ところが突然テレビが「それでは全国の9月4日の天気予報です。」と言った途端、雑魚寝を決め込んでいた606は起き上がって天皇陛下が終戦を告げる玉音放送でも流れるかの勢いで正座して目を凝らし、耳を立てた。 「明日は全国的に曇りから雨で九州と沖縄では激しく降るでしょう。四国・近畿・東海地方は昼前には雨が降るでしょう…」との事。 僕の帰り道の日本地図に太陽マークは無い。 降水確率も結構高い。 愛媛県通過中には降ってくるんじゃないかな? まぁ、帰りは濡れても平気。 合羽も持ってきたし… 心配しても仕方ねぇ! とにかく寝るべぇ〜!

 さすがに瞼が重かった。 それもそのはず…普段こんな時間に起きてるなんて大晦日ぐらいだもんなぁ。 八幡浜港までは2時間半。 充分充電できる時間だからテレビの音も船のエンジン音も無視して目を閉じた。
 ところが! 台風の影響か…船が激しく揺れる。 波を乗り越える感覚が横になってるから全身で分かる。 しかも時々船底から『バキッ!メキッ!』と聞こえる。 正直…怖い。 眠れない。 泣いてる子供もいるから、この揺れは尋常で無い事を悟った。 A型の悲しい定め…606号のギヤを入れたかどうかが、ここにきて大きな問題となって胃が痛くなりそうでした。 しかし、いつの間にか揺れにも慣れて…揺れが快感になり、爆睡しちゃいました。

 ピンポンパポーン! w(>。<)w 「間もなく八幡浜港に到着します。お車の方はお戻りください。」と、これでもか!というぐらいのボリュームで放送されて驚くと同時に殺意まで生まれました。 どれくらい寝たのだろう? 1時間半は爆睡したはず。 意識がモウロウとしながらレーシングシューズを履きました。 たぶん家に着くまで脱ぐことは無いと思ったので、少しキツメに履いた事は覚えています。 携帯とデジカメと財布を忘れないように持って606号に戻りました。 「良かった〜! ちゃんとギヤ入ってるよ。」とニコニコしながら606号に乗り込み下船準備。 スクリューの音が逆回転になって、接岸しているのが分かりました。 動きが止まって不思議な静寂が漂う中、僕は再び606号の腹を擦るんじゃないかと不安でいっぱいでした。 ハッチがゆっくり開き始めた時、ガンダムの一場面(ブライトが大声で)「ハッチ開け! ガンダム急速発進!」と叫ぶシーンを思い出して… 今から出撃みたいな感じで、自分で自分がカッコ良い〜!と思ってヨダレを垂れ流してました。

 しかし現実はエンジンかけて、地雷(突起物)をビビリながら避けてる自分が次の瞬間の姿でした。 ガンダム墜落!
 無事に船から降りると…そこは知らない場所。 船の中は快適な温度だたったけど、やっぱりこの時間は冷えるので、606号を左端に停車させて薄手のジャンパーを着る。 すぐに松山自動車道に入ると思ったのでヘルメットも被る。 完全武装で「さぁ!行くぞ!」と思ったら道が分からない。 最終の船だったので周りには人影も無い。 もちろん車は全部行ってしまった。 超不安。 すぐに現れた案内標識のとおりに右折して松山道に向かったつもりだったけど商店街を走ってる。 コンビニが営業してたから聞こうと思ったけど、この時間にこの格好では警察に通報されないほうがおかしい。 oceanさんには1本道だと聞いてたので、ドキドキしながら進む。 しかし淋しい道。 こんな道で本当に大丈夫なんだろうか? もしかしたら最初に右折したのが間違いで、本当は直進だったのか? と、そろそろ泣き出すところで『松山道入り口』の看板を発見。 これで帰れる!

 ようやく安心して帰れます。 ジャンパーもヘルメットもやっと活躍し始めました。 ヘルメット被ってたから泣きそうな顔しててもバレなかったしね! ヘルメット様様でした。  
 ひさしぶりにETCゲートを通過するみたいな感覚で松山道に入る。 ここは不思議な事に制限速度70km/h。 そんなの高速道路じゃないよ! バイパスだよ! 料金取るなよ! …とブツブツ言いながら時速70キロで走ってると、もの凄い勢いで乗用車に抜かれた。 どう見ても606号が止まってるぐらいのスピードだったので100キロぐらいのスピードで巡航する。 ただ…暗くて怖い。 真っ暗でセンターラインを頼りに走るしかなくて、そんなにはスピードが出せない。 トンネルも多くて70キロが制限速度だという事に納得できた。 でも前後には全く車が無いし、無意味に2車線ある。 知らないうちにスピードも100キロを越えて普通の高速道路並みの速さで巡航してる時もあった。 

 ふと、空を見上げると満天の星空(^-^) まだまだ雨の心配はなさそうだ! これなら家まで大丈夫そう。 早く帰るに越した事はないから…とアクセルを踏み込む。 キャブの音はヘルメット越しでも調子良い事は分かるから気分もイイ♪   順調に進んでると見慣れた青い看板を発見。 「あ!速度監視カメラが近くにある。」と606の頭は認知した。 しかし、この予告看板という物は必ず2個あるからまだ大丈夫と思い、2個目の看板を見落とさないように少しアクセルを緩めた。 その時… 看板に気をとられながらも、かなり前方に動くモノを発見した。 「なんだろう? ゴミ袋かな?」と思ったら目が二つキラリと光った。 「うわっ!犬だっ!」 しかもデカイ。 センターラインを越えて反対車線に行ったので安心していたら、突然目の前に飛び出してきた。 606号フルブレーキ! こっちに向かって来るからハンドルを切って避けたらクォータースピン。 間一髪で回避できた。 すぐにブレーキの煙に包まれて臭くて死にそう。 今までに無いブレーキングだった。 鈴鹿でもセントラルでもこれぐらいのブレーキングができていたら、もう少し速かっただろうな。 なんて…今だから笑って書けるけど。 
 それにしても跳ねなくて良かった。 後ろには激しいブレーキ痕が残っていた。 あんなデカイ犬をまともに跳ねてたら、間違い無くラジエータ壊れてただろうし… タイヤで轢いてたら606号は横転していたかも!   松山道が混んでたら大事故になってただろうし… 凄く怖かった。

 クォータースピンした606号の前にはコンクリートの壁。 1.5メートルぐらいで当っていた。 心拍数は200を軽く越えていたので、落ち着かせる為に近くのPAに入った。 船を降りた時からトイレを我慢していたので、あわや漏らすとこだったし… 調子良い場所にPAがあり、入りました。  が! またまた厄介な事に、族っぽい連中がたむろしていた。 静かに入ってきても音がデカイから視線を一気に浴びる。 「嫌だなぁ!」と思いながらも逃げるのも恥じだったし、トイレも済ませたい。 できるだけ手の届かない所に606号を止めて、トイレに行きました。 トイレに入ってる間「すげーよ!運転席にもタワーバーが入ってる。」とか「三河ナンバーだよ!」などと聞こえてくる。 ロールバーをストラトタワーバーと間違えてるあたりはカワイイと思えた。 本当はコーヒーでも飲んで落ち着きたかったけど… かえって落ち着かないだろうから、給油ポイントのSAまで先を急ぐ事にしました。

 喉もと過ぎれば何とやら…で、100キロで巡航。 これでも30キロオーバー! 淋しそうなPAを通過しようとした時、怪しく変な向きで光るテールランプを発見。 パトカーだった。 さすがに怖くなったので、ここから先はアクセル踏めなくなったよ。

 瀬戸大橋を渡る分岐に入る前にSAにて給油。 さすがにガラガラだし涼しい… 涼しいというよりは寒いに近いくらいだったので、薄手のジャンパーは本日大活躍です。 ここのスタンドのおじさんも感じの良い人で「三河ナンバーだね! どこから来たの?」と話しかけられました。 何時間ぶりかに人と喋れるのは意外と快感だった。 「西尾市という抹茶の有名な所から別府の仲間の所に遊びに行った帰りです。」と言ったら、「あ〜西尾市ね!」と… 知ったフリしてるのが見え見えだった。 だいたい愛知県に住んでる人でさえ知らない人が多いのに、このおじさんが知ってるワケないと思ったもん。
 給油も爽やかに済ませて軽くコーヒーを飲みました。 「ほっ」としたひと時。 さすがにこの時期の夜間飛行は606号のノーズコーン周りに大小多種類な生き物が張り付いてる。 ヘッドライトに向かって飛んできて、ヘッドライトに当らない虫は顔めがけて飛んでくるから、シールドも虫と液体で凄く汚い。 まだまだ夜間飛行が続くから606号の洗車は放っておいて、シールドを洗うついでに歯を磨こうと洗面所に行きました。 

 順番的には歯磨きが先だよね! しっかり磨いて口を濯ごうと思ったら水が出ない。 3つある洗面台が全部水が出ない。 仕方なく外にある蛇口をひねようとしたら『ダムが渇水につき節水にご協力を!』と書いてあった。 節水もなにも水が出ないじゃん! と、口を泡泡させながらウロウロして…仕方なく自動販売機でミネラルウォーターを買って泡を流しました。 なんちゅうリッチな歯磨きだろう! シールドもゴシゴシ洗って気分一新して瀬戸大橋を目指しました。

 坂出JCTから左方向に進み、瀬戸大橋が見えてきました。 薄ら明るくなってきた頃だったので、橋の全容が分かって思った事は… 『デカイ!』 ただただデカイ! しかも長い。 正直、暗い瀬戸大橋をオープンで渡るのは気持ち良いというよりも怖い。 でも何年越しかの『夢』を達成してる。 怖いけど嬉しい。 なるべく下を見ないように走り抜け、途中のSAにて休憩。 大きなSAだった! バカみたいに広い駐車場で瀬戸大橋と606号の記念写真を撮っただけで去りました。 三脚持ってたので長時間露出で上手く撮れたyo~  坂出JCTに近づいてきた頃から星空は一転して曇り空になったので、少しでも早く帰りたい気持ちが強かった。 天気の心配が無かったら、もう少しゆっくり瀬戸大橋を見る事ができたけど仕方ないですね。

 瀬戸大橋を渡り、岡山に入ってからは山陽道を進みました。 もうここまで来れば地図は不要! ようやく100%帰宅モードになったけど… 安心した途端に眠気が襲ってきました。 『道を間違えたらイカン!』と緊張していた糸が音を立てて切れた瞬間だった。 もう目を開けていられないくらい辛かったので、小さなPAに入って休もうと思いました。 それと同時にお腹も空いたので何か食べようと… しかし入ったPAがあまりにも小さかった。 何か食べたくても自動販売機のモノしかなくて、仕方なく大判焼きを買ったけど、出来上がるまでに凄い時間がかかり…自販機の前で寝てしまいそうだった。 出来た大判焼きは鬼のように熱かったけど、これが意外と美味しかった。 コーヒー飲みながら、のんびり食べて少し足を伸ばして休んだら眠気も飛んでいった。 きっと血糖値が下がっていたに違いない。 大判焼きパワー恐るべし! すっかり太陽も出て気温も上がってきました。 「あと一息!」と気合いを入れて、青空50%雲50%の兵庫県に入ったばかりの山陽道を走りだしました。

 まだまだ雨の降るような空じゃない! 中国自動車道に入って大阪・吹田JCT手前で大阪万博名物・太陽の塔を拝んで名神高速に入りました。 こちらの方は青空が多く、今回の戦いに勝利の予感すら感じました。 全く渋滞も無く突き進み… 眠気も無く、時間的感覚すら忘れて京都・滋賀を通過して岐阜県内に入りました。 滋賀県内くらいから青空は無くなったけど、空は高く雲も薄かったので安心していたら、この岐阜県関ヶ原の辺りからサラサラと降ってきました。
 これくらいの雨は何とも思わなかったけど…向かう愛知県方面は黒く厚い雲を確認できる。 サラサラ雨は606号が止まらない限り、人的被害は無いので岐阜県を駆け抜けて愛知県一宮のSAに入りました。 ここでもサラサラ降っていたので通過したかったけど、この先の小牧から名古屋高速に入るので最後のトイレ休憩に利用しました。 燃料が家までギリギリだったけど、時間との戦いが予想されたので給油無しで帰る事にしました。

 一宮SAを出て雨は一旦止み… 再び勝利の予感。 小牧ICから名古屋高速に入って西尾を目指す。 勝利の予感も一瞬で、再びサラサラと降り始めるが路面が濡れるほどではなかったので運転に支障はなかった。 ところが! 東新町の辺りでサラサラ雨は突然マシンガンのような雨に変った。 しかも同時に渋滞にハマり…止まってる状態で雨に打たれる。 ヘルメットとジャンパーで常時戦闘態勢だったので濡れずに済んだけど… 606号はドロドロ。 雨も一瞬だったので、ボンネットは紋々になってしまった。 「これぐらいは想定の範囲内!」と凹んだ気持ちを膨らませようと努力した。

 渋滞も一瞬で… ここから家までは雨も無かった。 ただ疲れきってたのでヘルメットを脱ぐ力も無く… 知立バイパスに入ってからは超無気力でした。 西尾市内に入ってもヘルメットが脱げず(本当言うとゴーグルを何処かに忘れてきてしまった。たぶん船の中か船を降りてからだと思う。)… メチャメチャ暑かった。 「もう少しで家だ! もう少しでビール飲める! シャワー浴びれる!」とブツブツ言いながらチキチ基地に辿り着く。
 やっとヘルメットとジャンパーが脱げる喜びが先だった。
 さっさと606号を格納してシャワー浴びてビール飲んで寝たかったけど…A型の悲しい定めで洗車しました。 だって虫だらけだったし… ホコリの上に雨降ったから、このままにはしておけませんでした。 頑張ってくれたしね♪ ザブザブ水で洗い流して、仕上げはパーツクリーナーで拭き上げる。 アルミ地肌が甦ったあとはラジエータに詰まった虫を細い針金で掻き出す。 ホイールも洗って洗車完了! 荷物をバネットGT-Rに積み替えて帰宅しました。

 帰って時計を見たら10時少し前。 「なんだ電池死んでるわ!」と思ったけど秒針が動いてるから生きている。 正直目を疑った。 自分の感覚では午後4時くらいだったので、まだ午前中だとは信じられなかったし… なんとなく得した気分でした。 さっさとシャワー浴びたかったけど、出発する前に部屋のコンセントを全部抜いたおかげで冷蔵庫が働いておらず… 氷やアイスが溶けて廊下が湖になっていた。 こちらの作業が先決と、イライラしながら片付けました。 倒れそうなくらいフラフラでシャワーを浴びて、メチャメチャ冷やした部屋に戻り爆睡。 たぶん今だったら小学生と喧嘩しても負けるくらい疲れてる。 でも何故か気持ち良い♪

 9月2日の午前10時から9月4日の午前10時という48時間。 3日間という感じがするけど正味2日間という不思議な感じ。 48時間のうち30時間は606号で走って、都合10時間くらいが睡眠時間。 残り8時間はサーキットに居たり、温泉入ったり、宴会していた。 こんなにも濃い48時間て今まであっただろうか? こんなにも楽しい48時間て今まであっただろうか? 全てはoceanさん始め大分(九州)の方々のおかげであり、BBSで応援してくださった方々のおかげだと痛感しております。 606号も2・3箇所の不具合を抱きながら出発したけど、なんとか無事に走破できました。 今回の企画は(も)他力本願寺的なところが多かったけど…ね。 
 なによりも元気な九州のセブン乗りの方々と仲良くなれた事が一番の『宝』です。 次はいつ行けるか分からないけど、また行きたいと思ってます。 その時は単独じゃなくて徒党を組んで行きたいと思ってますので、どうかまた遊んでやってくださいね。 感想文のエンディング… 書き足りないくらいだけど、書き始めたらまた1ページ使ってしまいそうなのでこれで〆ます。

 oceanさん本当にお世話になりました。 ありがとうございました。

by606 
おら別府さ行くだ(四国経由で帰ります編)