143 陸曹候補生への道 其の参

 学科試験は僅か1時間で終わった。  この『たった1時間』のために、大事な余暇を何時間失ったのだろうか?と思ったら、スッゲー損をした気分。  『たった1時間』でも合格か不合格で人生が大きく変わる隊員が多い中、僕みたいに合格だろうが不合格だろうが大して人生に影響しない隊員も多かった。


 学科試験の後は少し休憩を挟んで知能検査。  簡単な足し算を繰り返すだけの知能検査(性格検査かな?)を受けました。  ゲーム感覚で面白かったです。  珠算を習っていた僕には得意分野だったかも♪


 午前中は学科試験を受けただけで10時くらいに終了。  午後からの体力測定に備えてベッドで仮眠。
 昼飯を食べて午後からは1500mの持久走ができる服装で運動場に集合です。  陸上自衛官の悲しい定めで…  学科はどうでもいいと考えていた隊員も、こういう競争には真剣になる。  負けず嫌いな奴ばかりで面白いけど、陸曹候補生を真剣に目指してる隊員にとっては邪魔な存在だったはず。  勉強ができる奴って運動が苦手な奴が多いのは自衛隊も同じ。  上手くバランスが取れているのが面白い。

 1500m走はなんとな〜く走って真ん中ぐらいの順位。  あまり真剣に走って良いタイムを出すと、後々面倒になるのが陸上自衛隊。  持久走が速いと頼りにされて、不要な競技に駆り出されるんだもん。  そこそこにしておかないと…♪  あまり遅過ぎても成績悪くなるし。  考えながら走るのも疲れました。

 この日はこれで終了。  笑えるでしょ!  午後からの仕事は1500mを1本走って終わりだなんて。


 翌日は基本教練。  これ…全く情報がなくて何をするのかさっぱり分からなかった。
 先輩から聞いた話では、5人くらいの隊員を3分間行進させて、パイロンの間を1回通すのがルールらしく…  誰一人として練習すらできなかった実技。  回れ進め  縦隊斜め右に進め  などなど団体行動の号令をかけて、枠の中を移動させるという実技。(なかなか文章で説明するのは難しいなぁ)


 5人ぐらいの隊員は駐屯地内からランダムに選ばれるので、同じ中隊の隊員が同じ中隊の隊員の為に頑張る事はできません。  知ってる隊員も居れば初めて見る隊員も居ます。  その5人はとりあえず号令通りに進むけど、間違えたり、ヤル気のない隊員も中には居る。  まぁどの5人が相手をしてくれるのか全然分からないので、ここら辺は『運』だね。


 僕は20人中10番目ぐらいのナイスな順番を得ました。
 前の9人を見学できるし、あまり遅い順番だと行進する隊員が疲れちゃうし…  自分も待ち疲れちゃうもん。


 この実技は意外に難しかった。  なにせ行進できる枠が狭いので、次々に号令を発しないと枠から出てしまう。  枠は壁を意味する為、あらかじめ行進役には行進中に枠から出ないように伝えられていた。  その為、枠に当たれば足踏み行進になり、行進が詰まるという状況が与えられてしまう。
 パニックになる隊員が多かったのが事実。  何度も集合をかけて、やり直しをする隊員が多かった。

 でも僕は新隊員教育隊で号令を発して18人を行進させていたので、たった5人を行進させる事ぐらい簡単でした。  むしろ面白かったぐらい♪  相手をしてくれた5人も聞き間違える事も無かったので、無難に実技が終わった。  見物していた隊員から拍手を貰えて嬉しかったです。  この頃から見られサドになったのかな?


 これで一通りの陸曹候補生の試験が終了かと思いきや!  なんと午後から面接試験なるものまであった。  これは駐屯地指令以下、駐屯地の人事幹部、訓練幹部という偉い人の前で面接しなければならない。
 やっと終わったと思ったのになぁ(>。<)
by606